Athlete Robot

はじめに

動物のダイナミックで巧みな運動能力

動物は、環境に根付いて生きる植物とは対照的に、巧みに動き回ることができる。そのような脊椎動物の体の仕組みは「筋骨格系」と呼ばれている。筋骨格系は、感覚器や神経系の働きと相まって、獲物をつかまえたり、敵から逃げたりするときの俊敏な動きを支えている。しかし、動物の運動を仕組みは、まだわからないことが多く、さまざまな研究が行われている。

筋骨格ロボット

生きて動いている動物を調べることは難しい。走る、跳ぶ、のようなダイナミック運動であればなおさらである。そこで、動物の体の仕組みである筋骨格系を人工的に再現した「筋骨格ロボット」を作り、間接的に調べることを考えた。筋骨格ロボットを使って、動物のような体の仕組みをどうすれば人工的に作れるのか、そして、それをどのように制御すれば動物のような動きを実現できるのか、を調べることができる。ここでは、動物の中でもよく調べられている人間を対象にして、筋骨格ヒト型ロボットを開発する。

展望

ヒトの仕組みを調べる学問分野は多いが、ロボットを使った新しい研究方法を提案することができる。人間が人間をよく知ることには価値があると思われる。また、ここで得られる知見は、人間の運動能力を向上させることや、運動の補助や回復にも役立つと思われる。さらに、生物に学んだ有用な仕組みを人工物に応用することにも役立つと思われる。

アスリート・ロボット

俊敏な脚式・筋骨格ロボット

Athlete Robot
アスリート・ロボット (Athlete Robot) は、俊敏な運動を実現する人体の解剖学的構造と機能を備えた2脚ロボットである。ロボットの高さは約1.25m、重さは約10kgである。
筋型アクチュエータには、高圧エアで動作する空気圧人工筋を使っている。激しい動作では大量のエアを必要とするため、エア源は外部に置き、エアは直径1cm程度の細いチューブでロボットに供給している。また、電源ケーブルと通信ケーブルが、エアチューブと束ねられてつながっている。

空気圧人工筋

アスリート・ロボットに使われている空気圧筋は、直径1cmサイズで約100kgの張力を発生することができ、また、非常に軽量で衝撃にも強い。ロボットの駆動にもっとも多く使われるのは電磁モータと減速器の組み合わせであるが、俊敏な運動をするには重く、パワーが不足する。また、減速器は衝撃力などの過負荷に弱い。
ただし、空気圧筋は制御が難しいことがよく知られており、1950年代に発明されたにも関わらず、応用例が少ない。ここでは、空気圧筋の特長が活かせるダイナミックな運動を対象にすることに加えて、最近になって開発された特殊な空気圧制御バルブを使い、また、バルブに合わせて空気圧筋を製作することで、空気圧筋の制御の課題を克服することを試みた。

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